「もしも、私が『がん』になったら。」という本。
この本は、光文社から新書版で出ている、藤田紘一郎先生というお医者さんが書いたもの。
この本では、がんと向き合うことについて苦しい悩みのゾーンに入っている方のヒントになるかもしれないと思い、今回紹介させていただくことにしました。
藤田紘一郎先生の専門は、免疫学です。
先生は、もしご自分ががんになったら、客観的に自分の病気を知るために、詳しい検査を受けるでしょうと言っています。
客観的に、というのは、がんの性質、どの程度進行しているのか。そして、治癒不能のがんであれば、藤田先生は自分のもっとも好きな海外の島に行くだろう。さらに、進行がゆるやかだったり、早期発見だったりするがんであれば、自分の生きたい土地をゆっくりと旅したいと書いています。
「でも仕事は続けます」ときっぱり書かれています。
それは、仕事が私の生きる道だから、とも。「がんになったからといって今すぐ死んでしまうわけではないのだから」、「好きな仕事を続けるし」、「好きなことをあきらめる必要はない」とも書いておられます。
そして、治癒不能な場合でも、ゆっくりな進行や早期発見だった場合でも、そのどちらの場合でも「標準治療は受けません」と明確に書いてあることに驚きました。
もちろん、それは「私の場合の話です」と言っています。
若い人の場合と、藤田先生のようにある程度年を取っている方の場合は考え方が異なって当然である、がんは若い人の場合進行が速いことが多い性質があるというのが大きい理由で、そうであれば早めに手術を受けることに利点がある。しかし先生のように80歳を超えている場合、自分の死生観と、年齢をよく重ね合わせ考え、がんになったとき一番大切なのは、
その死生観と年齢に、治療を折り合わせていく生き方を見つけていくことだと。
標準治療が3つあって、その3つのどれでもない方法、がんと生きていく、という4番目の選択肢について書かれています。
参考までに、各章の見出しだけ紹介しますね。
第1章 もしも、私が「がん」になったら
第2章 私が、がんの三大治療を受けない理由
第3章 がんを知れば、がんとのつきあい方が決まる
第4章 がんを抑える食事、がんをつくる食事
第5章 がんを遠ざける生活習慣のコツ
がんにどう向き合うかは、「どう生きていくのか」に向き合うこと。
この本を読んで、私もあらためて、どう生きていくかに向き合いたいと思いました。
* 編集後記 *
「ねらわれた学園」などの代表作をもつ、SF作家の眉村卓さんが亡くなられたのは、
2019年の年末でした。縁があって、告別式に参列したのですが、そのとき娘で歌人の村上知子さんが、「父のことは(数年前から闘病していた)がんで亡くなるものと覚悟していたつもりだったので、誤嚥性肺炎によって急に死がおとずれて、心の整理がまだつかない」、
ということをおっしゃっておられました。
眉村卓さんは、奥さまががんで余命宣告をされたときから、奥さまに笑って読んでもらえるショートショートをとほんとうに毎日一話、実際に執筆して、それが「妻にささげた1778話」という本になり、さらにベストセラーにもなり、草彅剛主演、妻役は竹内結子で映画にもなっています(『僕と妻の1778の物語』星護監督)。
眉村卓さん。
晩年、がんに向きあっていた方であり、そこには眉村さんの、作家としての「書き方」もあり、一個の人間としての「愛し方」もあり、まさに生き方そのものを作品で体現された、
稀有な方でした。
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