がんという病気は、昔は「がん=死の病」というイメージの定着した病気でした。
しかし医療医学の進化した現代では、「がん=死の病、とは限らない」、というのは
ぜひもっと広く周知してほしい考え方です。
とはいいながら、がんに限らず、難しい病名を「他人事として」耳にした人の、言ってることは間違っていないけどぜひしないでほしい反応がたくさんあります。
「今はがんでも治る場合も多いらしいね」とか。
(→その人がどういう病状かによるのでひとくくりに言えない)
「ステージいくつ?」とか、「早期発見だったのはよかった」とか、
(→いずれにせよ病気になって「よかった」ということは口にしちゃいけない)
「どんな治療方針なの?」とか。
(→その治療方針に至るまでどんな葛藤と決断で決めたのかを想像してほしい)
そんな質問を返してきそうな人には、そもそもがんをカミングアウトしなければよいのですが、知らせなければならない関係であったり、深刻度を想像できないタイプの人である場合など、なんの悪気もなく、慰めようとか励まそうとかの善意で、その人の知っている話題でただ返してくることも多いので始末がわるいです。
「がん=死の病、とは限らない」、その考え方は正しい。
しかしそれが最新の、正しいことなのだから気軽に言葉にして慰める・励ますことが正しい、というわけではないことは、あらためてここで述べておこうと思います。
実際にがんを宣告された本人や家族にとっては、いかに生存率が向上したといっても死亡率1位の病気です。早期発見がどうあれ、ステージがどうであれ、悪性腫瘍が見つかったという向かい合うべき現実が目の前に立ちはだかったことに変わりはありません。
たいせつなのは、目の前にそういう困難な事実が立ちはだかった、ほかでもない、自分に。
あるいは自分の大切な家族に。これは何かの終わりなんてものではなく、さあそこからどうするか、そこからがスタートです。
さて今日のテーマ、「カンガルーテール現象」について。
「がん=死の病、とは限らない」というのは、「イメージ」とか、「考え方、気の持ち方」ではなく、明らかな数値をグラフ化した事実です。そのグラフに「カンガルーテール現象」といわれる数値曲線が現れているのをご存知ですか。
がん治療といえば、外科手術、放射線治療、化学療法の3本柱が標準治療とよばれてきましたが、免疫チェックポイント阻害剤など、免疫療法の登場によって、患者の生存率が向上していることが分かっています。
免疫療法による治療の効果によって、長期観察による患者の生存期間を表すグラフ(カプランマイヤー曲線といいます)が、カンガルーを横から見たときの長─いしっぽのように、何年、何十年と生きておられる患者さんが増えている、それが数値としてあらわされている。
お医者さんはそのカンガルーのしっぽを押し上げるように、生存率を押し上げる、というような言い方をするそうですが、免疫療法(あるいいはその併用)は抗がん剤と比較して、完治と言っていい長期生存率を「押し上げて」くれているのだそうです。
「カンガルーテール現象」と画像検索してみてください。グラフのカンガルーのしっぽが、下がりながらもですが長く伸びて、高いところで浮いている(生存している)のが見た目です。
がん細胞は、自分が健康だと思っている人の体内でも1日に5000個もできていて、その都度退治しようとしてくれているのが免疫細胞(リンパ球)。
免疫細胞の機能が落ちてきて、退治しにくくなってくる、あるいは突然変異のコピーミス細胞が蓄積されてくると、がんの細胞は増え、塊としてのがんになる。
私はよくこの状態に陥りやすい体質や習慣を「がん体質」とか「がん体質をつくる悪習慣」といいますが、がんの要因は、遺伝もあり、老化もありますが、がん体質を自分でも育ててしまっている場合も少なくない。
せめて自分や家族の体内のがんが、一定以上増えてしまった結果を今手元に持っているのなら、カンガルーのしっぽのように細く長く、しなやかに伸びるグラフの先にいくためにがん体質を、がん体質を育てる習慣を改善し、さあここからが人生スタート、とふんどしを締め直していきましょう。
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