こんにちは。
今日は、「押しつけない」というお話。
私がステージ4の胃がんを宣告されたのは13年前。宣告されたその日のことで、いつも思い出すのが、お医者さんに受診に行く道では、二人のこどもの父親でもあり、ひとりの50代女性の夫でもある、59歳成人男性。
なのに、その帰り道はもう「余命3カ月のがん患者」になってしまったということです。そして帰宅したとき、私の家族はその瞬間から「がん患者の家族」になってしまったことになります。
家族というのは、一番小さな社会です。
「私」といちばん近くで結びついた人たちの集まりです。
血縁によって、愛情によって、縁によって、などなど、現代ではその結びつきにも多様性があると思いますが、その結びついた家族に、がん、という現実は患者本人とほぼ同時に覆いかぶさります。
そして、家族それぞれが、自分のお父さんの・お母さんの・夫の・妻の・あるいは兄弟姉妹、同居人の「がん」について、あれこれと思い、感じ、悩み、経験者の方に話を聞いてきたり、今の時代ならインターネットでいろいろと調べたりすることもあるでしょう。
そして不安や、落ち込み、イライラなどに深く陥ってしまうことも少なくない。
家族は「第二の患者」ともいわれるゆえんです。
がんの治療は日々進歩をしていますが、それにより入院での治療ではなく、自宅から、治療のため通院するという形も増えてきています。必然的に、家族といる時間も長くなります。
そんなとき、家族としては「押しつけない」ということを、心の片隅にいつも置いておくことをおすすめします。
患者本人を思うあまり、家族ががんばってしまうのは無理もないことではあります。しかしそのあまり、これを食べたほうがいい、それは食べちゃだめ、とか、こういう運動をしたらとか。そう伝えたいときは、自分の気持ちの押しつけになっていないか、いったん確認。そんな習慣をつけてみてください。
乳がんの患者である神奈川県のKさんは、ご主人が自分を「深く理解してくれているなあ」と感じたのは、延命治療をやるかどうかの選択のときに、「自分の納得のいくようにおやりなさい」と言ってくれたことだといいます。
それはただ選択を患者本人に任せた、というのではなく、本人が自分で選択したいという気持ちを、深く分かってくれた、ということです。
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今日の話は、「押しつけない」がテーマでした。
私の家族は、私のがん宣告当時どんな感じだったかというと、
いろんな迷いも葛藤もありましたが、患者本人である私は、
「59歳まで生きたのだからいいじゃないか!」
というちょっと悟りにも似た気持ちに至っていました。
と同時に、家族みんなで話し合いをしたのですが、
その結論というか、一致団結したのが、
「この病気は治る!」
というものでした。そう家族で決めてしまったんです。
もう死んでも悔いはない、という思いと、
治る、という結論は、矛盾しているかも知れないのに、
事実、その二つが、私を生かしてくれました。
家族が心をひとつにして
治る!という方向へ歩みはじめた、
私たち家族にとってはものすごい記念日です。
13年前のある日……。何月何日だったかは忘れてしまいましたけれど。
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