こんにちは。
今回のお話は「自分を責めない」。
これは、がん患者ご自身はもちろん、
ご家族にも言えることだと思います。
なぜ自分ががんになってしまったのか。
なぜ夫が、妻が、家族ががんになってしまったのか。
それは自分のせいなのではないだろうか。
そんな風に思い込み、苦しい感情にさいなまれてしまうことはありませんか。
自分が、家族が、がんになったのは、
本人のせいでも、家族のせいでもありません。
「なぜがんになったのか」、という問いかけ、
「それは自分の何かが悪かったから」というような、
ひどく自分を、あるいは何かを責める気持ちが
頭の中から離れないのも無理のないことだと思います。
私も、胃がんステージ4を宣告されたとき、
どうしてがんになってしまったのだろう、
なぜ、なぜ……と考え込みました。
ご家族にがん患者がいる方も、またもちろん本人も、
ストレスに弱い自分だからなったのだろうか、
がんになりやすい性格というのはあるのだろうか、
自分のなにがいけなかったのだろうかと
堂々巡りのように思い悩んでしまう場合も少なくないかもしれません。
しかし、「なぜ」がんになったのか、
「その原因を突き止めることは現代の科学では困難」、
また、「がんになりやすい性格、
がんを進行させてしまう性格は証明されていない」、
そう国立胃がんセンターのサイトにさえはっきり明記してあります。
誰のせいでもないし、自分のせいでもない。
なぜがんになったのか、という問いや自分や何かを責める気持ちは、
頭の隅に、ちょっと追いやっておきましょう。
ドイツの哲学者、ニーチェのアフォリズムのなかに、
こんな考え方があるそうです。
自分という庭があって、そこには、湧いてくる感情や、抱いた疑問、怒りや喜びといった気持ち、衝動的な思いなどが植物になって生えている。急に生える草もあり、咲く花もあり、長年生えている樹木もある庭です。
自分を責めるような気持ちになったり、何かに対して、怒りの気持ちがふくらんだりしたら、それは今、庭に生えてきてしまった、望ましくない雑草のようなもの。
そんなのが生えてきたら、スポンと抜いてしまいましょう。
抜けないほどしぶとい根の雑草ならば、根のところで切っておく。
もしまたしつこく伸びてきたら、また切ればいいんです。
感謝の花や、うれしい草は、笑顔で眺めて観察し、水やりをして、育てていく。
そうすると気持ちのいい庭にどんどんなっていきます。
美しい花が咲いている庭もいいけれど、草が庭じゅう生い茂っている庭だっていい。
好きな花が咲いたら、また咲くように手入れすればいい。
自分の庭だから、自分の好きなようにしていいし、できる。
私もよく、「これは不要だな」と思う負の感情が庭に生えてきたと思ったら、「なぜ生えてきたんだろうか」なんてグルグル思い悩まず、スポンと抜いてしまうことにしています。
みなさんも、自分の庭に生えている、抜いてしまいたい雑草ありますか。
また咲いてほしい花に、水やり、していますか。

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自分の感情や性格を「自分の庭」と見立てたニーチェ。
『あらすじとイラストでわかるニーチェ』(イースト・プレス刊)には、
「自分の感情や性格は、自分の庭のように、
自由に扱うことができる」、とも書いてあります。
日々の生活の中で、インターネットやテレビなどの情報にさらされていると、
自分の庭の扱い方もパターン化しているような気がします。
自分らしい、庭の扱い方をして生きていきたいなあ……。
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