日本人の食生活は、
第二次大戦中・戦後の食糧の乏しく厳しい時代を乗り越え、
そして高度経済成長期を経て、
食料事情は安定し、豊かの一途をたどってきました。
生産も、流通も、保存も、加工も充実し、
「飽食の時代」といわれてしまうほど成熟しました。
そして「豊か」を通り越して、
売れ残った食材や、消費し残された食材、
豊富に収穫されすぎて、捨てたほうが損にならないからといった理由で、
大量の食材を廃棄することが常態化しています。
欧米型の食生活への急激な変化もあいまって、
栄養過多、ダイエットブーム、生活習慣病…といった
飽食のあだ花を生み出し続けています。
そして近年では、長い間遠ざかっていた
ある言葉を耳にするようになりました。
それは「新型栄養失調」です。
栄養失調、と聞くと、
食が不足してやせて細った人を思い浮かべます。
しかし現代の新型栄養失調は、
「食べているのに起こる」のが最大の特徴。
成人男性2200キロカロリー前後、
成人女性1800キロカロリー前後、
という一日に摂る総カロリーを仮に満たしていても(数値は諸説あり)、
その摂った栄養の中身が偏りすぎていて
栄養失調をきたしてしまうというのが「新型栄養失調」。
「中高生がご飯の代わりにお菓子やアイスクリームを食べる」とか、
「こどもでも食生活の内容によって成人病=生活習慣病になりうる」、
ということももちろん大きな問題ですが、
ここでは手始めに高齢者の場合を見ていくことにします。
高齢者が新型栄養失調になるケースは、足腰が弱くなって立ち上がる、歩くことが減るなどにより、
1) 外に買い物に出ることが少なくなる
ことなどをはじめとして、
2) 「体調の不安定」や「気力の低下」で、自分で料理をする機会が減る
といったことで1回の食事を大切にする気がなくなり、
かんたんな調理もせずに済む総菜ものなどで
「これで済ませればよい」になってしまう。さらに
3) 咀嚼(そしゃく)する力、噛む力が徐々に弱まることで、固いものをよく噛んで食べることがなくなっていく
といったことが挙げられます。
かんたんすぎる食事、
買ってくるだけの味の強いお惣菜には、
カロリーは多くても、
タンパク質、ビタミン、ミネラルが確実に少ないことがほとんど。
高齢者の「新型栄養失調」は、次に
さまざまな副次的デメリットを生んでいきます。
筋力の低下、
骨粗しょう症、
免疫力の低下によって感染症にかかりやすくなるなどをはじめ、
そこから転倒のリスク、
寝たきりのリスクにつながっていきます。
次回は、新型栄養失調はどうすれば防いでいけるのか、
具体的な対策について見ていくことにしたいと思います。
実りの秋。
いつも食べている定番の食材ではない、旬のもの、
を意識して摂ることも、
ひとつのバランスのとりかたです。
目先を少し変えて
少し遠いところのスーパーまで足をのばす、
いつもは手にとらない新鮮な食材を
カゴに入れてみるのはいかがでしょうか。
Comments